イスラム帝国
<イスラム帝国 “東西貿易”と“イスラム教”による発展>
古代ローマ帝国の滅亡以降、ヨーロッパから西アジア周辺で権力を持っていたのはペルシャ帝国。
ササン朝ペルシャ(現在のイラン周辺)~ウマイヤ朝~アッバース朝と10世紀頃まで繁栄していましたが、ここにはお金の起源とも言うべき現象と、民族を率いる宗教の関係性が色濃く表れます。
日本人からするとイスラム!?なんだか怖い・・・という印象や、世界史の中でも苦手とする方が多いような印象も受けますが、非常に重要です!
まずは、その地理的な理解から始めていきたいと思います。
※8世紀頃(ほぼ最大領土)の頃の地図 “世界の歴史まっぷより“
今現在の、イラン、イラク、サウジアラビア、エジプトから北アフリカ(チュニジア他)、スペインまで支配をしていた大帝国でした。
まさに、今現在イスラム教徒の多い国々ですね。
この広大な領土を支配することが出来た「経済的」な理由は、ヨーロッパ、アジアとの盛んな貿易にあります。
この三つの道を通って、東のアジア(インド、中国他)から、砂糖、米、綿花、レモン、バナナ、蒸留器(ウイスキー他)中国の陶磁器などが地中海ヨーロッパに伝わりました。
この広大な領土で活発に取引される通貨を695年に、ウマイヤ朝が法定貨幣として統一し、巨大な統一経済圏となります。(ファルス銅貨・ディルハム銀貨・ディナール金貨)
ウマイヤ朝 685‐705年 ディナール金貨
もう一つの、理由。それは「宗教(イスラム教)」
610年にムハンマドがイスラム教を開きますが、その理由は経済的な背景が色濃くあります。
前述の通り、東西の貿易が盛んになり、国家経済は栄えていました。しかし、それは一方で貧富の格差を生むことにも繋がります。貿易の中心地でもあったメッカ。
※この当時メッカの人口は150万人、ヨーロッパのフランク王国のアーヘンが3,000人という事から、どれだけイスラム国の経済が発展し、良質な食べ物で人口増加していたかが分かります。
ここでムハンマドは信仰していきますが、ムハンマドは元々富裕層の生まれで、その資金を貧困層に与え、唯一神アッラーの前に皆平等という貧困層救済の活動を行い、貧困層を中心に爆発的に市民権を得ていく事になります。
その後、豪商や支配者層に迫害を受けつつも、その貧困層を軍制化しササン朝を滅ぼし、新たなイスラム世界を作り上げていきます。
現在、イスラム教と聞くと怖いイメージを持ちますが、元々は貧困層の救済。しかし武力集団であったという事は今とあまり変わらない気も・・・もちろん現在の過激派との単純比較はできませんが。
いずれにせよ、イスラム帝国は、元々は経済の発展、その後宗教によって爆発的にその支配圏を拡大していったという事ですね。
さて、経済は活発でしたが、それでも広大な領土の国家の国富=金銀を確保するのに様々な事を実施しています。
彼らはどのようにして、金・銀を獲得していたのか?
1、財宝の略奪
2、教会修道院の財宝を納税
3、エジプトの埋蔵金
また銀も支配地域で、大量に産出されていました。
しかし、10世紀頃から、金銀の減少による悪鋳貨によるインフレと反乱、人口の減少が起こります。
金銀の絶対量が不足、経済が混乱することで、徐々に金銀がヨーロッパへと流出し、国家は衰退していくことになります。
=貿易赤字によって国富であるマネタリーベースが減少してしまいました。
そんな中、金銀の枯渇と広い大帝国内での取引を簡易化する為に、「手形」が発行されます。
商人達は、広い領土のあちこちで取引をするのに重い硬貨を持ち運びするのは大変!そして危険!ということで、「手形」が発行されます。
これは当時の考え方としては非常に画期的で、お金=金銀といった金属主義であった人々の常識概念を変えるものです。それは、今現代に繋がる、お金とは「信用」であり経済の根幹は「信用」であるという事を、イスラム商人はこの当時認識をしていたという事になります。
ちなみに、世界初の紙幣は中国「宋」の時代に作られた「交子」と呼ばれる紙幣です。中国では銅銭を莫大な量で発行していましたが、それでも足りず、、、紙幣を発行します。
その後中国はその「紙幣」で滅びていく事になりますが、この事はまた別途記述いたします。
【まとめ】
「イスラム帝国」という時代を、マネー経済という視点で見ると・・・
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東西貿易で経済が大きく栄えた。中国等のアジア~イスラム帝国~ヨーロッパという広大な経済圏が確立され数百年間国家経済は発展していきました。
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その経済の血である“お金”は法定通貨として統一されたことで、経済は非常に安定した。
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経済の発展→国民の貧富の格差を生み、貧富の救済を目的にイスラム教が成立、その後クーデターを起こし更に領土を拡大していった
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拡大する経済、金銀強奪をしつつも不足し「手形」を発行。しかし経済の抜本的な対策となる「紙幣」とは言えず、マネタリーベースが不足し、経済は衰退していく。